紅葉の美しい時期、去る10月17日北方圏学術療法センターポルトにおいて日本音楽療法学会北海道支部の18回研修会が行われた。参加者は71名で熱心な学びの場となった。
演題発表は6題という過去最多の発表であった。短い時間にコンパクトに要点をまとめて発表するという学びにもなったが、質疑応答にもう少し時間がほしいという意見も散見された。前半の3件(北構氏、三浦氏、斎藤氏)は他職種ちに連携や実践方法について、また評価方法も多様で興味深かった。後半(尾上氏、増澤氏、鈴木氏)は対象が住宅終末期、失語症、アルツハイマーと多様で各対象者へのアプローチの仕方、目標設定の在り方について座長より示唆があった。
医学ミニレクチャーは精神科医で音楽療法士の長谷部夏子氏であった。
長谷部氏自身の経験も交え、精神病患者に対して、医療者サイドから・家族サイドからの視点、家族療法の歴史が話された。久村氏の「患者はそのご家族の代表」という言葉の通り、音楽療法士としては対象者やご家族の「現在」を偏見や先入観を排除してしっかり受けとめることが必要であると思われた。
午後の部の教育講演は星信子氏の「赤ちゃんと人のかかわり」についてであった。非常にわかりやすくはっきりと整理された内容で、会員の感銘も深かったようであった。赤ちゃんの時からヒトは感覚器官が発達していること、また赤ちゃんと人の関わりは安心〜愛情〜自立の図式でありこれは音楽療法士と対象者の関係にも置き換えて考えられることであろう。
最後のシンポジウムは児童領域の3つの実践現場からの話題提供であった。児童デイの「経度発達障がい児」の曽山氏、「言語障がい児」の時岡氏、学校現場での「不登校児と特別支援学校」の加藤氏で、異なる実践現場での幼児から高校生までのそれぞれのアプローチの仕方が話された。子供たちへ音楽療法の可能性としてコミュニティや保育、教育の現場などでの今後の展開を期待したい。またシンポジウムと冠する以上、会場との意見交換がほしかったとの声が寄せられた。今後の課題と思われる。
ピアノ教師を経てとある会社の広報部に籍を置いていた時、『音楽療法』という言葉を初めて耳にした。ある意味人生の岐路にいた私は直感で「これだ!」と飛びついた。医療大(当時北海道ではそこでしか勉強できなかった)の社会人枠で2年心理学と共に勉強。卒業後、恩師の紹介で老人保健施設に音楽療法士として就職でき、その後学会認定の音楽療法士の資格を取得した。施設と同系列のがん専門病院に移動になって5年になる。
言葉で表現することが苦手な私、初対面ではなおさらである。だが、ポパイのホウレンソウの如く音楽の力を借りることで、力が増すことを実感している。張り詰めた雰囲気が音楽を流すことで和む、そんな経験も多い。よく患者に「音楽療法で癒されました」と言われるが、私自身音楽に救われることもたびたびである。当院では、朝からお見送りスタートすることも多い。その気持ちを引きずらずに別の患者に向かわれなければならない。亡くなった方が好きだった曲を追悼の想いで演奏することがあるが、キーボードで演奏しているうちに、こころがほどけていくのを感じる。音楽の持つ不思議なパワーのなせる技である。
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しかし、その不思議なパワーを言葉にできないもどかしさもある。患者や家族はそのパワーを体感してくれていると思うが。言葉にできないのが音楽だ、では通用しない。特に医療現場では医師、看護師、作業療法士など、言葉にして評価しないと受け入れてくれないようだ。現在私はリハビリテーション課に所属、同僚は作業療法士である。彼女らは、医学の知識を1年、評価の仕方を2年学び、1年の実践を経て国家資格を取得するとのこと。日々土壌の違いを痛感させられている。音楽療法の世界では常識なことでも、医療の分野ではそうでないことがほとんどだ。医療の分野との共通言語を増やすために、医学の知識、評価の仕方を充分に学ぶことが、今後の課題だろう。
病棟のステーションに顔を出すと、予定していた患者さんの容体が急変していた。その日の病棟のリーダーから「訪室も厳しい」と。が、課長は「Aさん、状態厳しいの。音楽聴かせてあげて」。訪室すると初めて会う息子さんも「歌は聞こえますよね」と受け入れてくれた。実施中息子さんも涙しながら聴いており、終わると感謝の言葉を頂いた。始めは反応がなかったが、終わって手に触れると少し暖かさが増した印象だった。その1時間後亡くなられた。課長から「看取りは、患者と家族だけの時間を望む人もいるけど、家族が望むなら入って欲しい。音楽が入ると場も和むし、緊張感がほぐれる。家族も患者といい別れが出来ると思う」嬉しい言葉だった。
日時:2011年5月22日(日)10:00〜16:00
場所:北翔大学北方圏学術センターポルト
(札幌市中央区南1条西22丁目1番1号)
TEL:011-618-7711
プログラム(予定)
10:00〜11:30 一般演題
11:30〜12:00 医学ミニレクチャー
教育講演:森谷 満氏
(北海道医療大学病院心療内科)
「コーチングについて」
13:00〜14:00 2011年度日本音楽療法学会北海道支部総会
14:00〜15:30 シンポジウム
15:30〜16:00 レポート作成
研修会費 会員:2,500円 学生会員1,000円
非会員:4,000円 学生:2,000円(学生書提示)
○研修会および支部総会の参加申し込みについて:参加申し込みの締切りは5月15日(日)です。必ず申し込みをお願い致します。
○演題募集について:一般演題抄録の締め切りは4月24日(日)です。
・必ず簡易書留にて事務局まで送付してください。
・演題募集の体裁について:原則として事例研究の場合は「対象者及び目標」「方法」「経過及び結果」「考察」の形式です。研究発表の場合は「研究の目的」「方法」「結果」「結語」の形式です。
・図表も含めてA4サイズ1枚に収まるように記載してください。なお本文の文字は10.5ポイントで48文字x40行でまとめてください。詳しくは音楽療法士規則P11〜12の『事例研究レポートの作成要領書式』を参照ください。但し、内容は未発表のものとします。
・事例研究に関わる同意書・誓約書を作成してください。同意書は各自で保管し、誓約書は抄録と一緒に提出してください。書式については事務局にお問い合わせください。
日本音楽療法学会北海道支部事務局
【住所】 〒062-0922
札幌市豊平区中の島2条1丁目3-25 カムオンビル
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●ニューズレター第18号(2010年8月27日発行)
●ニューズレター第20号(2011年8月31日発行) |